2017.09.01 金.
軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク活動報告 | 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 Vol.02
平成29年9月1日(金)に開催された福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議・福岡県主催の「軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017」の模様をレポート致します。
INDEX
- 軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク活動報告
- 福岡県商工部 新産業振興課 企画監 見雪和之氏
ーー福岡県商工部 新産業振興課企画監、見雪和之氏より、軽量Ruby普及・実業家促進ネットワークの活動報告について説明がありました。その内容は以下の通りです。
軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク活動報告
福岡県商工部 新産業振興課 企画監 見雪和之氏
福岡県のこれまでの取り組みについて
福岡県ではこれまでプログラミング言語「Ruby」に注目し、2008年からRubyに関する産業の振興に取り組んでいます。
2010年にはRubyを組み込みシステムに適用させるため、経済産業省からの支援を受け、福岡の産学官連携で軽量Rubyの開発に着手。
2012年4月にオープンソースソフトウェアとして公開されました。
2014年11月にはデバッカー付きの安定版を公開。 2015年7月には軽量Ruby普及・実用化促進ネットワークを設立。
Rubyによるソフト開発に取り組む企業数は、平成20年の16社から平成29年3月時点では404社と拡大をしています。※県内のRuby開発企業は8年で25倍集積。
軽量Rubyの特徴
軽量Rubyは、WEBやクラウドの分野で発展して来た「Ruby」を組み込みの分野に適用させるために開発された、福岡発のプログラミング言語です。
C言語と比較して、4分の1のコード量で記述することができ、可読性も高いため、「生産性が高い」「試行錯誤やメンテナンスがしやすい」「技術習得が容易」という特長があります。
また、ネットワークやデータベースとの親和性が高いのも特徴となっています。
このような特徴を持つ軽量Rubyにより、設計品質の向上、開発コストの削減、生産性の向上といった課題を解決することが可能となります。
また、今後の市場の拡大が見込まれ、IoT分野の開発にも親和性が高く、IoT関連システムに適しています。
軽量Ruby普及・実用化促進ネットワークについて
このネットワークは、軽量Rubyに関心を持つ企業に最新の開発技術情報などを発信する他、ソフト事業とハード事業の企業交流を通じて、製品開発やビジネスの創出につなげていくことを目的にしています。
<軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク 会員内訳>(H29.8月現在)
(軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク調べ)
ネットワークの会員は現在、163名。
ソフトからハード、情報通信まで、幅広い分野の企業が参加。
事業内容としては、
- 軽量Rubyに関する最新技術・開発事例等の情報発信
- 軽量Ruby活用に向けた技術学習イベントの開催
- 共同開発や受託開発等につなげるマッチング
などに取り組んでいます。
福岡県先導的Rubyソフトウェア開発支援事業の採択事例のご紹介
この事業は、Rubyの新しい適用分野や、世界市場への展開における製品の開発に対し支援するものです。
事例1: 正興ITソリューション株式会社 様 「シリアスゲーム起立の森」
- 目的
- 高齢者支援施設等において、高齢者の皆さんに起立運動(リハビリ)を楽しみながら継続していただくこと。
- 開発概要
- 起立判定ゲームBOX(カメラ、距離センサ)の基盤の部分の制御に軽量Rubyを使用。
福岡県では、医療福祉ネットワークを組織して実証実験に取り組んでいることもあり、県の目指す方向性とも一致しています。また、海外でもリハビリ機器のスタートアップ企業も増えていることもあり、今後の市場展開に期待されることが評価され、採択となりました。
事例2: 株式会社エフェクト 様 「車内設置型アルコール検知器の開発」
- 目的
- 車内のアルコール濃度を常時測定し、飲酒運転の可能性を外部へリアルタイムに通知することにより、交通事故を未然に防ぐ。
- 開発概要
- 常時車内のアルコール濃度を測定。基準値を超えた場合、外部へ通知(LED点滅、BLE経由でスマホ通知)センサーメインボードに軽量Rubyを使用。
飲酒運転の撲滅は、社会的にインパクトが大きく、アジアへの市場展開も期待されることから採択につながりました。
紹介された2つの事業は、福岡県IoT推進ラボの先導的モデル事業としても位置付けられています。
開発技術力向上に向けた取り組み
「mruby IoTフレームワーク勉強会」
ソフト開発者向けに、軽量Rubyの習熟と普及促進を図るため、mruby IoTフレームワークの概要と使用方法について解説する技術勉強会が福岡と東京で行われました。
参加者は軽量Rubyの開発効率の高さを実感し、ここから新製品開発につながるチームも生まれています。
技術勉強会の開催(福岡2回、東京2回 参加者計23名)
また、勉強会では、シナリオに沿って設定を入力するだけで簡単にIoTプログラムを自動生成できるIoTシステム開発フレームワーク「Plato」とマイコンボードを使用したIoTシステム開発を体験でき、参加者からは、「アプリケーションの枠組みをすぐに作成でき、手軽に試せてよい」「実際に動作する機器で動きが見れたことで、運用への応用を想像できた」「mrubyを活用して、オフィス環境濃度のリアルタイム確認システムを作りたい」などといった声が聞かれました。
※29年度の技術交流会は、mrubyを活用した実践的IoT研修を予定されています。
「IoT体験勉強会」
この勉強会はアマゾンウェブサービスジャパン株式会社に よるIoT事例やトレンドの紹介があった他、参加者は、株式会社Fusic社が開発した「mockmock」を使用してセンサーデバイスでの情報収集から、収集したデータの分析といった一連の流れをハンズオンで体験。
また、IoT体験勉強会の参加者が、IoTデバイスを含むシステムを試作する時に、ハードウェアやソフトウェアの開発を一体的に体験できるパッケージを開発し、県内3箇所のFablab施設に配置。
今後は各Fablab施設において、このパッケージを活用したIoT体験会などを実施する際は技術的サポートを実施する予定です。
IoT製品の試作検証・研修
県内企業から軽量Rubyを活用したIoT製品やサービスのアイディアを募り、そのニーズに則した製品サービスを試作・検証する実践形式の試作検証・研修を実施。
具体的には、富士通九州ネットワークテクノロジーズ(株)社の保有する既存プラットホームへ軽量RubyをVMポーティングするための設計支援や周辺ライブラリの作成支援などをNPO軽量Rubyフォーラムのサポートのもと実施。
終了後には、試作品の仕様書や研修資料の成果物がサイトで公開されています。
新たなビジネス展開に向けた支援について
国内最大の組込み総合技術展「ET2016(EmbeddedTechnology)」などの大型展示会への出展支援を実施しています。
ET展への出展は、福岡県と同様にRubyの普及に力を入れている島根県と合同で出展しています。
- 【商談件数】
- ブース来場者:約500名
- 商談件数:119件
※今年度も、県内企業を中心として、ET展への出展を予定しています。
他にも、IoT JAPAN 九州2017(6月、福岡国際会議場)や、CEATECJAPAN2017 (幕張メッセ)において、IoT関連の展示を実施。
軽量Ruby普及・実用化促進ネットワークポータルサイトの紹介
技術情報の発信や、会員間の交流促進
軽量Rubyの動作条件などの技術情報や各種マニュアル、軽量Rubyの適用事例、約120社の会員情報などを掲載したネットワーク会員向けポータルサイトを開設。(平成28年9月)
- 会員登録・お問い合わせ:
- 福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議
(担当:伊見、杉本)
http://www.digitalfukuoka.jp/mruby-network/
MAIL:info@f-ruby.com
TEL:092-483-1225
FAX:092-483-1216
福岡県のRuby、軽量Rubyの普及・実用化促進への強力なサポートが心強いですね。
しかし、こういった活動内容があまりよく知られていないように思います。
RubyistBizでは今後もRuby・軽量Rubyの有益な情報を皆様にお伝えしてまいりたいと思っています。
【Vol.02】はここまで。
まだまだ続きます。
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.01
- 1. 開会挨拶
- 福岡県商工部 新産業振興課 企画監 見雪和之氏
- 2. 来賓挨拶
- 経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課 企画官 和泉 憲明 氏
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.02
- 軽量Ruby普及・実用化促進ネットワーク活動報告
- 福岡県商工部 新産業振興課 企画監 見雪和之氏
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.03
- 基調講演1【⾞載組込みシステム開発の現状・動向とmrubyへの取り組み】
- 名古屋大学未来社会想像機構 教授 高田 広章氏
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.04
- 基調講演2【Rubyでデータ分析ができる未来】
- 株式会社Speee 畑中悠作氏
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.05
- トークセッションQuestion for Matz
- Ruby開発者 まつもとゆきひろ氏
GMOペパボ株式会社 シニア・プリンシパルエンジニア 松本 亮介 氏(質問者)
株式会社Fusic 技術開発部門エンジニア 毛利 啓太 氏(質問者)
九州工業大学 准教授 田中 和明 氏(モデレーター)
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.06
- mrubyを活用した高セキュリティ、実用化可能な世界初のプラットフォームの紹介
- 九州工業大学 准教授 田中 和明氏
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.07
- 軽量Rubyの最新活用事例紹介
- NPO法人軽量Rubyフォーラム 事務局次長 石井宏昌氏氏
- 軽量Ruby普及・実用化促進フォーラム2017 レポートVol.08
- 展示・交流会
- 株式会社Fusic[mockmock]他