2017.10.05 木.
シリコンバレー・ビジネスセミナー「米国ビジネスに関する具体的な検討と進め方」-天 野 雅晴(あまの まさはる)氏
平成29年10月5日(木)に福岡アジアビジネスセンターセミナールームにて開催されました「シリコンバレー・ビジネスセミナー」の模様をリポートいたします。 このセミナーは平成29年10月25日(水)~11月3日(金)に行われるシリコンバレーミッション2017(http://www.digitalfukuoka.jp/topics/100/)に参加し、現地で商談やプレゼンテーションを行う予定の方や、その他一般の方でシリコンバレーに興味をお持ちの方や英語でのスピーチについて知りたい方を対象に行われたものです。
株式会社グローバルビジョンテクノロジー
天野 雅晴(あまの まさはる)氏
1990年に株式会社グローバルビジョンテクノロジーをシリコンバレーに設立。日米企業の架け橋としてのコンサルティング業務やベンチャーキャピタル業務を実施。2013年に米日カウンシル正会員として参画。2016年にカウンシルメンバーとともにグローバル・ビジョンパートナーズを設立し、日本企業のためのグローバル人材育成事業をスタートするなど多方面で活躍中。著書に『180日でグローバル人材になる方法』『シンプルでうまくいくコミュニケーションの技術』などがある。
INDEX
- 「米国ビジネスに関する具体的な検討と進め方」
- 株式会社グローバルビジョンテクノロジー 天野 雅晴(あまの まさはる)氏
ーーIT企業にとってシリコンバレーとはITの聖地ですし、一度は行って見聞を広げたいものですね!
今回は、福岡県で行われているシリコンバレーミッション2017に参加する方や、今回は不参加でも今後参加を検討されている方を対象にしたセミナーに参加させていただきました。
天野氏の講演では、シリコンバレーで実際にビジネスに結びつけるための具体的な方法や進め方などをご紹介いただきました。
米国カウンシルとの協力関係
今回、米日カウンシルを代表して、シリコンバレーでの事業をご検討されている企業にどういったサポートをできるか、また、シリコンバレーのビジネスについて経験談等も交えてお話をされました。
米日カウンシルとは
米国を中心に約600名の会員がおり、そのうち約100名弱が日本在住、500名強がアメリカ在住。
日本とアメリカを結んで色々なビジネスの支援をしている、あくまでも非営利団体。
各会員は活躍中の方が多いので、米日カウンシルを通して、そういった方とふれあい、ネットワークを作れば多様なビジネスに繋がることもあります。
- U.S.-JAPAN COUNCIL(米日カウンシル)
- http://ja.usjapancouncil.org/
天野氏は約4年前に会員となり、その後、福岡県をはじめ、広島県、岡山県、静岡県など6県のネットワークのメンバーのイベントなど、この4年に渡り、毎年、米日カウンシルの担当者として主催されています。
2016年8月SVJP発足(AP Initiativeとの共催)
去年8月にSVJP(シリコンバレージャパン・プラットフォーム)という別組織を発足。
米日カウンシルは全米(東海岸・ハワイなども含まれる)を対象とした活動ですが、皆さんが一番興味あるのはシリコンバレーなので、シリコンバレーに絞った活動をするため、この組織を発足させたそうです。
この組織には著名な方が数多く参加されています。詳細はSVJPのサイトをご覧ください。
- SVJP
- http://svjp.org/
天野氏は個人の活動においても、技術者だった経験から主にテクノロジーの分野での日本とシリコンバレーを結ぶ支援を行っており、具体的には、日本には、いいもの(技術など)を持ち、頑張っている”ものづくり”企業が沢山あり、そういった企業をシリコンバレーに紹介していきたいと考え、既に様々な活動を徐々に進められています。
米日カウンシルの課題
● 米日カウンシルとSVJPの、日本に関連する会員の方々は、皆さんが忙しい方が多く、中々活動に参加できない。
● 数多くの日本の視察団を、google、apple、テスラ、スタンフォード大学などといったシリコンバレーの訪問先に案内・紹介してきたが、実際にビジネスに結びつくことがほとんどない、何も起こらない、という残念な状況。
現地の企業や大学などが忙しい中、時間を割いて見学案内を行うわけですが、それが何にも結びつかず、お互いの何の利益も生まないので、その結果、訪問先企業や紹介した人たちが地元のネットワークから不評をかってしまっており、現在は視察を拒否するところが増えているようです。
シリコンバレー中にそれが知れ渡っており、日本企業は避けられているのだそうです。
視察ではなく、きちんとビジネスとして進められるならいいのですが、一種の流行りみたいに視察をしている。非常に残念な状況ですね。
今後、日本企業がシリコンバレーに進出するためには、意味のある提案、商品、テクノロジー、プレゼンテーションを持って、お互いに利益に結びつくよう、本気でビジネスとして進めていく必要があるようです。
SVJP Annual Retreat 2017
9/22〜9/24 @Ritz Carlton, Half Moon Bay, California
スライドより
SVJP Annual Retreat2017というイベントで登壇されたJim Adler氏の言葉です。
「自動車メーカーはいずれエネルギー産業かサービス産業のどちらかに棲み分けされる!」
つまり自動車メーカーという括りはなくなるということを言っています。
日本経済は自動車産業にかなり依存していますが、それに対して、彼はいずれ自動車メーカーはなくなると言っているわけです。
今後、「車を買う」のではなく、「乗るサービスを買う」方向に向かうだろう、と言われています。
車のシェアリングサービスの例として、現在、Uber(https://www.uber.com/ja-JP/)などがあります。
Uberは車を販売する会社ではなく、一般の方々が運転し、タクシー代わりに利用できるサービスです。
しかし、今のUberは、人件費が高過ぎて、あまり利益を出しておらず、ビジネスになっていないようです。
Uberが目指しているのは完全な自動運転であり、それが最終的な形なのです。
おそらく5年か10年後くらいにそれが実現できるのではないでしょうか。
なぜならば、トヨタが米国で相当な資金(5年間で10億ドル:一千百億円)を出して真剣に取り組んでおり、急速に実現に向かっており、日本の経済にも多大な影響があると思われます。
米国ビジネスの目的と位置づけ? 未知との遭遇
皆さんがアメリカでビジネスをしようと考えた時に、どういう目的・位置づけでやっていくか。 天野氏曰く、それは「未知との遭遇」です。
シリコンバレーは以前はIT系企業が多いイメージでしたが、最近はものづくりや医療系もありますし、様々な分野・職種の企業が存在しています。
今まで誰もやっていないこと、現状の諸々のことを覆すーーディスラクティブなイノベーションがメインテーマです。
日本では既にある誰かが作ったものを改善(性能上げたり、価格を下げたり、小さくしたり、細かいいろいろな機能をつける)している会社がほとんどです。
つまりディスラクティブではなく、新しいことをしているわけではない、改善です。
しかし、日本はそろそろ改善で済む時代はそろそろ終わりを告げるでしょう。
そうなったときに、では、新しい何か、ディスラクティブな何かはどうやったら作れるのか。
シリコンバレーに行くと未知との遭遇のきっかけが見つかる場合が考えられます。
皆さんが既に持っているものを持っていくだけで、日本とは違う反応が見られ、「あぁ、こういう使い方があったんだ」「こういう売り方もあったんだ」という発見があったりするわけです。
違う売り方、違う用途、そういったキッカケを得るためにシリコンバレーに行くといいのではないでしょうか?
仮に、シリコンバレーに行って商談が成立しなくても、こういう考え方もできるんだ、新しいものを持ち帰っていただきたい。
そうすることによって、新たなニーズ・ビジネスの可能性を創出できるかもしれない。
新しいビジネスの可能性は、アメリカではなく、もしかしたら日本にあるかも知れない、あるいはアジアかも知れないわけです。
アイデアだけ持ってきて日本でやるということでもいいのです。
ただ、切り口が、日本にいるだけではわからない、みんな同じようなことをやっているので埋もれてしまってわからないので、シリコンバレーに行くことによって新しい風を持って帰る事ができ、それを使って日本でビジネスにするって言う手もあります。
そういう意味も含めて「未知との遭遇」を目的・位置づけにするのもいいんじゃないでしょうか。
具体的な検討と進め方
- 1. 展示会に出展
- 皆さんのやっていることを自身を持って不特定多数の方々に、「私はこういうことをやっていますよ」と提示してください。
シリコンバレーの展示会には、日本の展示会より、より多くの色々なことをやっている人が全米から来場します。ものすごいネットワークを作ることができ、普段聞かれたことないようなことも聞かれることもあり、それは「未知との遭遇」となります。
日本はそれを聞き出せるような素晴らしい何かを持っていると思います。アメリカでもそれは期待されています。そこからたぐっていって深堀ができます。
- 2. ネットワーキング
- 展示会に来る人はほとんどネットワーキングのために来ています。
いろんな人と知り合って何かにつながるわけです。
- 3. 商談
- 商談にも至るかもしれません。
すぐには発展しないかもしれませんが。
- 4. 現地(仮)オフィス・コンタクト窓口の設置
- さらに話が進みそうであればフォローアップしたいものですが、展示会で「オフィスあるの?」と聞かれるとします。
「日本、福岡にあります」と答えると、日本はFar East、遠いイメージなので、引かれてしまうようです。
できれば、仮のインキュベーション施設でいいので設置できるといいですね。
計画された偶発性
スタンフォード大学クランボルツ教授のキャリア理論:
「個人のキャリアは、予期せぬ(偶発的な)出来事の積み重ねで成り立っている…」
成功者たちにその理由を尋ねた結果、偶然なことが多かったという統計結果が出たそうです。
天野氏自身も、現在まで偶発的な出来事の積み重ねで現在に至るそうです。
2年だけ、とりあえず遊びに行こうとアメリカの大学院に行き、クラスメートが就職活動をしていて、たまたま流れで一緒に行ったところ、仕事が見つかってしまい、2年くらいやって帰ろうと思ったのが7年近くいることになり、たまたま会った人に起業をすすめられて設立したのが今の会社ということでした。
そして、同時多発テロが起こったため、仕事が止まり、これはもうダメだと思ったそうですが、たまたまやっていたCADの仕事でチャンスの神様の前髪を掴んで、デトロイトに店を出して生き延び、その後、日本にも作っておこうと思って会社を作ったそうです。
どうなるかわからない、つまり、決められた一定のルールに依存しているだけだと狭い選択肢になってしまいます。
自分の発想を超えないといけません!
そんなの無理です←これではダメです。
わからないけど無理やりやる、行く、そうすると、その次が見えて来ます。
行かないと見えてきません。
見えなかったものが見えて来る、それの繰り返し、繰り返すことが大事なのです。
最初から偶発を利用してやろうという計画
どうやるかはわからない、新しい何かをやるってことはそういうこと。
どこに正解があるかわかりません。正解はありません。
やばいこわいで逃げたらだめなんです。
いいか悪いか微妙だけど、天野さんはそうやって来て繋がって来ているそうです。
アメリカのシリコンバレーの成功者はそういうパターンが多いそうです。
日本は決められたパターンで昇進して行く、という慣習が残っているのでちょっと違うようですが。
実はこれはビジネスにも当てはまります!
ある程度の偶発性がないと、新たな何かの創出の鍵は見つからないのではないでしょうか?
まとめ
● 「決まってる何か」に合わせる時代から「新たな何か」を創出、展開する時代に!
● 糸口は「未知との遭遇」
とても明確に説明していただき、米国、シリコンバレーでの具体的なビジネスの進め方が理解できました。
日本からの視察団が現地企業から敬遠されているというショッキングな現実もわかり、同じ日本企業としては、悪いイメージを払拭していきたいですね!
そのためには、今後、日本企業がシリコンバレーに進出するためには、意味のある提案、商品、テクノロジー、プレゼンテーションを持って、お互いに利益に結びつくよう、本気でビジネスとして進めていく必要があるようです。
米国やシリコンバレーへの進出をお考えの場合は、ぜひ、参考にしてみてはいかがでしょうか!
シリコンバレーセミナー【Vol.01】はここまで。
【Vol.02】は近日更新予定です。お楽しみに!